KyashのEngineering Managerになって一年が経った

これは Kyash Advent Calendar 2021 の21日目の記事です。

KyashでEngineering Managerをしている Matsuuraです。2020年06月にKyashに入社してから1年半、2020年09月にEMになってから1年3ヶ月が経とうとしているのでその間を振り返ってみようと思います。

私がどういう背景でEMを志すようになったのか、どんな考えでEMをやっているのかを通してEMという職業に興味を持ってもらったり、興味を持っている人に対して参考になれば幸いです。

なぜEMをやろうと思ったか

私の職務経歴としてはKyashが3社目になります。

  • 1社目:地元の映像機器メーカー
  • 2社目:物流系のスタートアップ
  • 3社目:Kyash

1社目

まず1社目は200-300名規模で一応上場もしていた会社でした。新卒で入社して数年は純粋にエンジニアとして開発業務のみを行うことが出来ました。周囲の技術レベルは高いですが比較的、お客さんとの調整やマネジメントをしたがる人は少なく開発だけをやっていたいという人が多かったです。私が入社とほぼ同じタイミングで外資に買収されて以降、新卒採用どころかリストラが進められたので、何年経っても新入社員は入ってこず私は一番下のままでした。人が減っていく一方だったので、一番下の私にもあらゆる仕事が舞い込んできました。営業に同行して見積もりも書いたり仕様の打ち合わせをしたりカスタマイズ開発をしたり時には開発を外注し、その管理をしたり設置納品・サポートまで何でもやりました。

先にも書いたようにお客さんと話したり外注管理をしたりなどはやりたがる人もいない中で、私は比較的人と話すのが好きな方だったのであまり苦には感じない方でした。開発のことが分かった上でユーザーとの調整も可能な人材ということで、そのうちエンジニアを私の配下につけて私がユーザーと仕様を調整し、何を開発するかをエンジニアに指示するようになりました。気がつけばチームリーダーとなり先輩エンジニアたちをマネジメントするようになりました。

中には50代の大ベテランの方や入社直後に技術面で指導してくれた先輩も含まれており、中々に荷が重いものではありましたが自分たちがやりたがらない領域を若手がやってくれているという思いもあったようで、協力的な姿勢ではいてくれ何とかやっていました。ただ、自分のキャリアについてきちんと考えずに成り行きに任せていたらこのような状況になっていたのでコードを書く時間が極端に減った自分に対して焦りもあり今一度、純粋なエンジニアに戻りたいと思い転職しました。

2社目

2社目でも1~2年は開発に専念させてもらえました。スタートアップの初期フェーズからJoinしたので特に縛りもなく、自分の裁量でも色んなことが決められるし本当に楽しかったです。しかし会社が成長して人数が増えていくにつれ、増えた人たちを纏めてチームや組織として上手く機能させてゆかねばならなくなりました。

ここでも自発的にマネジメント領域に手を挙げる人はおらず、私も特に手を挙げたわけではなかったのですが、特に教育制度が整っているわけでもない環境に入ってきた新入社員たちに対して、オンボーディングの手伝いやタスクの割り振りを自然とするようになっていました。

その様子を見ていたCTOからEMというロールを私に任せたいとの打診があり、私は「まあ既にそれに近いことをやっている状況でもあるし・・・この状況では自分がやるしかないだろう」ということでそれほど深く考えずに引き受けました。

ここでふと純粋なエンジニアに戻ろうと思って転職したはずなのに、気が付くとまたマネジメント領域に入っていってしまっている自分に気が付きました。

1社目でもマネジメントが嫌だったわけではなく、1社しか知らない自分がマネジメントをやっていて市場競争力のあるエンジニアになれるのかというキャリア上の危機感だったので「自分は自分で思ってたよりはマネジメントに対する適正があるのかもしれない」と考え直すようになりました。すごく上手くマネジメントできた!という成功体験があるわけではないのですが、真面目に目指せばそう思えるようになるかもしれないと思うようになりました。

2社目は事業方針の変化に賛同できなくなり転職することになりましたが、3社目は始めからEM前提で転職を行うことになりました。

Kyashでの採用時のやり取り

Kyashと最初にお話したのは現CTOの @ymzkmct (当時VPoE)とのカジュアル面談でした。本人は覚えていないかもしれませんが、マネージャー同士ということもありマネジメントの苦労話で盛り上がった記憶があります。

そのカジュアル面談ではKyashを良く見せようと取り繕うものではなく、課題も包み隠さず説明してくれてマネジメント領域でも困っているので是非協力して欲しいという感じでした。立場が上になるほど弱みを見せまいと振る舞いがちなものですが、私は一人で無理に解決しようとするよりも素直に周囲に助けを求める方が上手くいくと思っているので、このときの @ymzkmct さんの説明にはむしろ好感を抱きました。

ただし私もEMとして上手くやれるなんて自信は何も無かったので、最初から「EMが来たらしいぞ!」という期待値で迎えられることには抵抗がありました。なので「半年間はエンジニアとして働かせてもらって、その間に技術やドメイン知識の吸収や他のエンジニアたちとの関係を築かせてもらってから問題無ければEMにしていただければ」という条件を出させてもらい快諾していただきました。

入社後

まず3ヶ月間は普通に開発をさせてもらうことができました。久しぶりにコーディングに没頭する期間となり、やっぱりこれはこれで楽しいんだよなとも思いました。

しかし当初思ってたよりはドメイン知識も広く他の開発チームともまだ十分に話せていない中で当時のEMの方が外れることとなり、まだ半年は経っていませんがEMを引き受けてくれないかと打診されました。

正直まだ不安だらけでめちゃくちゃ悩みました。今まではマネジメントを任されるといっても他のメンバーとは年単位で関係を構築してきた状況でのことでしたし、最初に担当することになったのは、まだ一緒のチームになってから一ヶ月も経ってないチームでした。不安しか無かったので随分と渋りましたが @ymzkmct さんの説得に応じて最終的には引き受けました。

EMになった後

自分とチームメンバー3人の4人チームでしたが、2つの開発を2人ずつに分かれて並行して進めることになっていた状況でした。

つまりまだ私も開発の頭数に入っているということで、慣れないドメインでKyashでのEMとしての立ち回り方も分からず、開発も2ライン並行してて複雑で、最初の3ヶ月は本当に頭がパンクしそうでした。

私は最初からメンバーとの1on1で「EMとしては、まだまだひよっ子なので上手くいかないことだらけだろうから皆に頼りまくると思います」と言っていました。実際、上手くいかないことだらけで信用を失ってしまったかな?と疑心暗鬼になってしまうことも度々で、EMになってからの3ヶ月くらいは常に不安に駆られた時期でした。

その後、開発していた機能も無事リリースし、コーディングからは少しずつ距離を置いてマネジメントに専念していくようになり、メンバーとの距離感も分かってきて、今の1チームだけの担当ならやっていけそうな気がしてきました。

少し自信が付いてきたと上司の@ymzkmctさんに言うと、今年の春頃に更に1チームを任されました。更に以下の記事にもあるようにEMが一人外れることになったので、合計3チームを担当するようになりました。業務委託を含めて12人を担当することになり、この辺りで自分でコードを書く時間は完全に無くなりました。

おそらくこの辺りが今の自分にマネジメントできる限界に近い規模なのかなという気がしています。ちゃんと見るなら10人くらいまでに抑えておいた方がいいようにも思うので今後の課題ですね。

EMをやった感想

改めてEMをやってみての感想です。

  •  やりがいは感じる。自分のスタイルの問題もあるかもしれないですが、基本的には感謝されることの方が多い気がします。
  •  やはり自分にはある程度の適正はあると思いました。これは上手くマネジメントできるかどうかという意味ではなく、マネジメントしていて精神的に苦痛を感じたりやりがいを見出だせなかったりするかどうかの精神面の問題です。
  • Kyashだから何とかやれている部分があると思います。会議の度に詰められるような組織だと自分は恐らく持たなかったでしょう。Kyashにはエンジニアに対するリスペクトの気持ちもあるし、特定の人に全てを押し付けるような組織文化ではなく、相互に支え合うOneTeamというバリューが浸透している結果だと思います。

課題としては

  • プロジェクトマネジメントや状況把握などでも、ある程度忙殺される。EMとしてやるべきことがやりきれていない。
  • EMとして上手くできているか、そうでないかの評価軸が作り辛い
  • 担当チームに限らない会社全体の問題に対してどこまで踏み込むのか、バランスが難しい

というところが挙げられるでしょうか。一つ目が特に課題だと思っています。

EMとしては、エンジニアが働きがいを持って働けるようにその障害を取り除くことだったり、成長を促すための機会を提供をすることだったりが必要だと思っているのですが、そこが十分に出来ているかというとまだまだ不十分だと思っています。

EMに興味がある方、目指す方に言いたいこと

他社の話も聞いたりしますが、EMが十分に足りているという話を聞くことはまずありません。エンジニアの需要が高まり続けていますがEMの需要の高まりはそれ以上だと感じています。需要があるというのは大事なことです。需要があるからこそ、それに答えることが出来れば感謝もされるし、やりがいも生まれるでしょう。

EMの道を考える人には、常に周囲に相談するように心がけていれば極端な失敗は起きにくいですし、自分に合わないと感じたならエンジニアに戻る道もありますし、それが私のように何度か往復したって構わないので、迷っているなら一度やってみてはどうかと言いたいです。

Kyashに限らずEM業界も盛り上がることを期待しています。また、EM・エンジニアともに共に一緒にKyashで働く仲間を募集しております。興味のある方は是非Meetyで連絡をください!

meety.net